第6回
吉川英治文庫賞
受賞作

今村翔吾さん

今村翔吾さん

1984年(昭和59年)6月18日、京都府木津川市生まれ。36歳。 2016年「狐の城」で第23回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞を受賞。デビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(祥伝社文庫)で2018年、第七回歴史時代作家クラブ・文庫書き下ろし新人賞を受賞。同年、「童神」で第10回角川春樹小説賞を受賞(のちに『童の神』と改題し、角川春樹事務所より書籍化)。2019年、『八本目の槍』(新潮社)で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。2020年、『じんかん』(講談社)で第十一回山田風太郎賞を受賞。

原点今村翔吾

 忘れもしない。2016年3月26日。本シリーズはこの日から始まった。
 さらに遡ること一年前、私は小説家を志して前職ダンスインストラクターを辞した。いざ目指すと言っても右も左も解らない有様で、デビューに直結する賞と、そうでない賞の差も知らない。直近〆切のものに闇雲に応募するだけ。そして受賞したのがデビューは無い「九州さが大衆文学賞」。前述の日はその授賞式があった。
 式典の後、選考委員の北方謙三先生とお話する機会があった。先生は「多分、この人は長編が書ける。騙されたと思って書かせてみればいい」と、その場で出版社に勧めて下さった。但し「食べていく気があれば、三月くらいで書く必要がある」と釘を刺される。
 おお、怖え。試されていると思った私は丹田に力を籠め「一月で十分です」と答えた。
 余計なことを言ったものだ。何を書くか決めていない。ただこれが最初で最後の小説となるかもしれないと考えた時、過ぎったのは前職を辞す時、教え子たちに言った「三十歳からでも夢が叶うことを、俺が残りの人生で証明する」という大風呂敷。再起の物語にしたい。そして生まれたのが一巻となる「火喰鳥」であった(一月ぎりぎりで)。
 表紙絵を担当して下さる北村さゆり先生にも感謝を申し上げたい。あの男たちの「背」が多くの人を惹きつけ、今に至っているのは間違いない。
 最後に読者の皆様へ。ここまで来られたのは皆さんのおかげです。まだまだこの物語は続くので、共に走り抜けて下さると幸いです。

対象は、2019年12月から2020年11月に、シリーズの5巻目以降が一次文庫で刊行された小説のシリーズ作品。文庫レーベル名は、対象期間内にそのシリーズの文庫新刊が刊行されたレーベルです。