第8回
吉川英治文庫賞
受賞作

上橋菜穂子さん

上橋菜穂子さん

1962年、東京都生まれ。作家・文化人類学者。1989年『精霊の木』で作家デビュー。1996年『精霊の守り人』を偕成社より発表。野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞する。以降、「守り人」シリーズとして現在まで全十三巻を執筆。『闇の守り人』で日本児童文学者協会賞を、『神の守り人 来訪編/帰還編』で小学館児童出版文化賞、児童福祉文化賞を受賞。国際的にも極めて高い評価を得ており、英語版『精霊の守り人』は米国バチェルダー賞を、『闇の守り人』は米国バチェルダー賞オナーを受賞している。他の著書に、『狐笛のかなた』(野間児童文芸賞)『獣の奏者』(米国プリンツ賞オナー、米国バチェルダー賞オナー)『鹿の王』(本屋大賞)『香君』などがある。2014年、国際アンデルセン賞作家賞を受賞。

受賞のことば上橋菜穂子

 「守り人」シリーズの第一作『精霊の守り人』が世に出たのは1996年で、当時、私は大学に助手として勤める傍ら、多様な文化的背景をもつ人々が暮らすオーストラリアで、フィールドワークをしていました。
 「守り人」シリーズの主人公、女用心棒バルサは、故郷を追われて様々な国を渡り歩き、それぞれの社会にはそれぞれの文化があることを肌で知っている人です。
 文化と文化の境を縫うように旅していくバルサは、私が「こう在れたら」と思う人でしたから、二十年以上もの間、彼女の物語を書くことが出来たのでしょう。
 「守り人」シリーズは児童文学だと思われているようですが、私は物語を書くときに、ジャンルを考えたことがありません。ただ、自分の中から生まれて来る物語を紡いでいるだけです。ですから、「守り人」シリーズが文庫本になり、大人も子どもも気軽に手にとって、通勤、通学のお供にしてくださっていることが、うれしくてなりません。
 その上、なんと、吉川英治文庫賞をいただけるなんて、夢のようです。
 選考委員のみなさま、「守り人」シリーズを支え続けてくださった担当編集者さんたち、イラストレーターさん、出版関係者のみなさま、書店員さん、秘書さんズ、家族、そして、四半世紀を越えるほどの長きにわたって「守り人」シリーズを楽しんでくださったすべての読者に、心から御礼を申し上げます。
 本当に、どうもありがとうございます!

対象は、2021年12月から2022年11月に、シリーズの5巻目以降が一次文庫で刊行された小説のシリーズ作品。