第3回
吉川英治文庫賞
受賞作

有栖川有栖さん

有栖川有栖さん

1959年(昭和34年)4月26日大阪府生まれ。58歳。同志社大学法学部卒業。大学時代は推理小説研究会(現同志社ミステリ研究会)に所属し、機関誌「カメレオン」に創作を発表する。卒業後、大手書店に就職。その後デビュー作の原形となる「月光ゲーム Yの悲劇‘86」を第30回江戸川乱歩賞に応募する。1989年、東京創元社「鮎川哲也と十三の謎」の1冊『月光ゲーム Yの悲劇‘88』でデビュー。
2003年『マレー鉄道の謎』で第56回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。2000年11月より2005年6月まで本格ミステリ作家クラブ初代会長を務める。2008年『女王国の城』で第8回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞。「火村英生」シリーズには、エラリー・クイーンに倣った『ロシア紅茶の謎』『スウェーデン館の謎』『ブラジル蝶の謎』など一連の「国名」シリーズもある。
近著に、『濱地健三郎の霊なる事件簿』『ミステリ国の人々』など多数。

受賞のことば有栖川有栖

 鮮やかな推理で名探偵が事件の謎を解く――というのが本格推理小説(本格ミステリ)の基本形です。「本格推理って何なんですか?」と訊かれることも多いのですが、確かに判りにくい呼称で、〈名探偵小説〉でもいいかもしれません。
 私は本格推理小説が書きたくて作家になった者なので、オリジナルの名探偵を創り、作品は必然的にシリーズものになりました。多くの偉大な先達がそうしてきましたから、迷うこともなく。
 26年前に〈火村英生シリーズ〉の第一作を書いた時、「この探偵の活躍を死ぬまで書きたい」と希いました。純文学や他のジャンルでは考えにくいでしょうが、それは本格推理作家にとって幸せなことなのです。反復に耐えるだけの強度が各作品に必要で、反復の中にどれだけ豊穣なものを盛り込めるかが問われるにしても。
 そんな想いで書き続けてきたシリーズで吉川英治文庫賞を受賞できるとは。自分も愛読してきた素晴らしいシリーズがずらりと候補に並んでいましたから「まさか」だったし、「主人公の変化・成長を積極的に描かない名探偵小説でもシリーズとして評価してもらえるのか」という意味でも驚きました。
 折しも同シリーズの最新作を連載中なので、「それでいいから、頑張って好きなだけ書け」と励まされた気がしています。
 ありがとうございました。

対象は、2016年12月から2017年11月に、シリーズの5巻目以降が一次文庫で刊行された小説のシリーズ作品。
文庫レーベル名は、対象期間内にそのシリーズの文庫新刊が刊行されたレーベルです。